医療・介護現場のDXで書類作業を削減し、人と向き合う時間を取り戻す|ジョシュコラムVol.2
記録や報告が膨大で、帰宅後に残業してまで仕上げなければならないケースもあります。
もし報告や記録がタブレットやスマホでその場で完結し、「今日中に書かなきゃ…」というプレッシャーから解放されたらどうでしょうか。
利用者さんの話をじっくり聞いたり、次のケアに備える時間が生まれます。
本記事では、医療・介護の現場で進むDX(デジタル化)が、日々の働き方をどのように変え、スタッフと利用者双方にどんなメリットをもたらすのかをご紹介します。
医療・介護現場における書類作業の実態
医療・介護の仕事は「人と向き合う時間」が本質です。しかし現実には、膨大な記録や報告書作成に多くの時間が割かれています。
紙の帳票やパソコン入力が中心で、勤務時間の中で事務作業が大きな割合を占めるのが当たり前でした。
こうした背景から、「書類作業の負担軽減」は長年の課題となってきました。
この課題を解決するカギとして注目されているのが、DX(デジタル化)です。

書類業務がなくなると広がる可能性
タブレットやスマホを使えば、移動中やケアの合間に記録をサッと入力できます。
その場で終わらせられることで「あとでまとめて書く」負担が減り、気持ちにも時間にも余裕が生まれます。
DXは「仕事を奪う」のではなく、「人にしかできないケア」に集中できる時間を取り戻すための道具なのです。
こうした仕組みは、働き方そのものをどう変えるのでしょうか。

移動や残業の削減につながる
訪問のたびに事務所に戻って報告して…という流れは、大きな時間のロスです。
データ共有がオンラインでできれば、移動時間が減り、その分1日に訪問できる件数が増えたり、スタッフの残業が減ったりします。
このように、業務効率化はスタッフの負担軽減だけでなく、利用者さんへのサービス向上にも直結します。
具体的に、現場ではどんなシーンでデジタル化が活用されているのでしょうか。
現場でよくあるDX活用シーン
- 利用者さん宅でリハビリの様子を動画で記録し、そのまま共有
- 服薬チェックや食事記録をタブレットで入力し、帰宅後の確認作業を省略
- 緊急対応の指示や相談をオンラインで受け取り、即座に次の行動に移れる
こうした事例は、デジタル化が「人と向き合う時間」を守り、より質の高いケアに繋がることを示しています。
ただし、デジタル化が進む一方で、現場には新たな課題も生まれています。便利さだけでなく、その裏にある注意点を理解しておくことが欠かせません。
デジタル化の課題と紙の役割
もちろん、すべてをデジタルにすれば万能というわけではありません。
操作に慣れないスタッフや、端末・Wi-Fiの不具合で記録が滞る場面もあります。
また、入力方法の違いでデータの正確性にばらつきが出ることもあります。
だからこそ、デジタルと紙を使い分ける柔軟さや、バックアップ体制が欠かせません。
DXは「置き換え」ではなく「補完」と考えることが大切です。
まとめ
DX化は、介護や福祉の現場から書類作業を減らし、「人にしかできないケア」に時間を取り戻すための心強い味方です。
便利さと安全性のバランスを取りながら、直感的で負担の少ない記録方法が広がれば、現場はもっとラクに、質の高いケアが可能になるでしょう。
スタッフの負担軽減は、利用者さんの安心にも直結します。今こそ、DXを日々の業務の中でどう活かすかを考えるタイミングです。
監修者プロフィール
富田寛生/作業療法士/修士(リハビリテーション科学)
100BLG株式会社 研究員